
「100億年に1秒しか狂わない時計」と聞くと、まるでSFの世界の話のように感じますよね。
しかし、そのような超高精度の時計が、すでに現実のものになっています。
それが光格子時計です。
光格子時計は、東京大学の香取秀俊教授が考案した日本発の技術として知られています。現在の標準時に使われているセシウム原子時計を上回る精度を持つとされ、将来は「1秒」の定義そのものを変える可能性もある時計です。
さらに2025年には、島津製作所が世界初となる商用光格子時計を発売しました。価格はなんと1台5億円です。
この記事では、光格子時計とは何か、なぜそこまで正確なのか、なぜ5億円もするのか、そして考案者である香取秀俊教授のノーベル賞の可能性まで、初心者にもわかりやすく解説します。
光格子時計とは?
原子を利用して時間を測る超高精度時計
光格子時計は「原子時計」の一種です。
現在、世界の標準時はセシウム原子時計によって作られていますが、光格子時計はそれをさらに上回る精度を持っています
私たちが普段使っている腕時計やスマホの時計は、機械や電子回路によって時間を刻んでいます。一方、光格子時計は「原子が持つ一定のリズム」を利用します。
原子は種類ごとに決まった周波数で反応します。この非常に安定した性質を使うことで、普通の時計とは比べものにならないほど正確に時間を測ることができます。
現在の「1秒」は、セシウム133という原子の性質をもとに定義されています。光格子時計は、このセシウム原子時計よりもさらに高い精度を目指す次世代の原子時計です。
「光格子」とは何?
光格子時計という名前の中にある「光格子」とは、レーザー光で作る格子状の空間のことです。
少しイメージしにくいですが、レーザーの光をうまく重ね合わせると、原子を閉じ込めるための小さな「くぼみ」のような場所を作ることができます。
その中に、極低温まで冷やした原子を入れます。
つまり光格子時計は、レーザーで作った光の入れ物の中に原子を並べ、その原子の動きを読み取って時間を測る時計なのです。
普通の時計が歯車や水晶を使うのに対して、光格子時計は原子とレーザーを使います。
ここが、いかにも未来の時計らしいところですね。
光格子時計を考案したのは東京大学の香取秀俊教授
光格子時計の基本的なアイデアを提案したのは、東京大学の香取秀俊教授です。
香取教授は、原子を光格子の中に閉じ込め、多数の原子を同時に観測することで、非常に高い精度で時間を測る方法を考案しました。NICTも、光格子時計は香取教授によって提案・原理実証された方式だと説明しています。
この技術は日本発の重要な発明として、世界中の研究機関で研究が進められています。
「日本人が考案した未来の時計」と考えると、急に身近に感じられるかもしれません。
※NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)は、日本標準時を管理する研究機関であり、光格子時計の実用化や次世代標準時の研究を進めています。
なぜ100億年に1秒しか狂わないの?
光格子時計がそれほど正確なのは、原子の安定した性質を利用しているからです。
現在の原子時計より100倍以上高精度
光格子時計は現在の標準であるセシウム原子時計より100倍以上高い精度を持つとされています。
その精度は18桁レベルと呼ばれ、
100億年動かしても誤差が約1秒
という計算になります。
宇宙の年齢より長い
ちなみに宇宙の年齢は約138億年と考えられています。
つまり光格子時計は、宇宙誕生から現在まで動かし続けてもほとんど狂わないレベルの精度ということになります。
現在の原子時計との違い
現在の標準的な原子時計は、セシウム原子を使っています。
セシウム原子時計も非常に正確で、私たちが使っている標準時や通信、GPSなどを支える重要な技術です。
しかし、光格子時計はセシウム原子時計よりもさらに高い精度を持つと期待されています。
大きな違いは、利用する周波数です。
セシウム原子時計はマイクロ波を使いますが、光格子時計は光の周波数を使います。光の周波数はマイクロ波よりもはるかに高いため、より細かく時間を刻むことができます。
たとえるなら、目盛りの粗い定規で測るより、目盛りが非常に細かい定規で測る方が正確になる、というイメージです。
そのため、光格子時計は次世代の「秒」の基準候補として注目されています。
島津製作所が光格子時計を発売
光格子時計は長い間、大学や研究機関で開発されてきた技術でした。
ところが2025年、島津製作所が世界初の商用光格子時計を発売しました。
製品名は「Aether clock OC 020」。
そして話題になったのが、その価格です。
1台あたりの価格は5億円。
時計と聞くと、腕時計や掛け時計を想像してしまいますが、光格子時計はそのような日用品ではありません。
むしろ、最先端の研究装置です。
中には高精度レーザー、真空装置、原子を制御する装置、光学機器、温度や振動を管理する仕組みなどが詰め込まれています。
5億円という価格も、単なる「高級時計」だからではなく、国家レベルの時間計測や研究に使うための科学装置だからです。
なぜ5億円もするの?
光格子時計が5億円もする理由は、大きく分けると3つあります。
まず、必要な技術が非常に高度だからです。
原子を極低温まで冷やし、レーザーで正確に閉じ込め、わずかな周波数の変化を読み取るには、普通の時計とはまったく違う技術が必要です。
次に、部品が非常に精密だからです。
光格子時計には、安定したレーザー、真空装置、光学部品、制御装置などが必要です。どれか一つでも精度が不十分だと、時計全体の性能に影響します。
そして、まだ大量生産される製品ではないからです。
家庭用の時計やスマホのように何百万台も作るものではなく、大学、研究機関、標準時を管理する機関などが使う特殊な装置です。
そのため、価格も非常に高くなります。
つまり光格子時計は、私たちが部屋に置く時計ではなく、未来の社会インフラを支えるための「時間の測定装置」と考えるとわかりやすいでしょう。
光格子時計は何に役立つの?
「そんなに正確な時計があっても、普段の生活には関係ないのでは?」と思うかもしれません。
たしかに、朝起きる時間を知るだけなら、スマホの時計で十分です。
しかし、社会全体で見ると、正確な時間はとても重要です。
たとえば、通信、金融取引、GPS、電力網、科学研究などでは、ほんのわずかな時間のズレが大きな影響を与えることがあります。
光格子時計が実用化されると、より高精度な位置情報、地殻変動の観測、標準時の高度化などに役立つ可能性があります。
地面の高さの違いも測れる?
光格子時計の面白いところは、時間を測るだけでなく、重力の違いまで読み取れる可能性があることです。
アインシュタインの相対性理論によると、重力が強い場所では時間の進み方がわずかに遅くなります。
つまり、高い場所と低い場所では、ほんのわずかに時間の進み方が違うのです。
普通の時計ではその差はわかりません。
しかし、光格子時計ほど正確な時計なら、そのごく小さな違いを測定できる可能性があります。
これにより、地盤の沈下、火山活動、地殻変動などを調べる新しい方法につながると期待されています。
時計なのに、地球の変化を測る道具にもなる。
ここが光格子時計のすごいところです。
「1秒」の定義が変わる可能性もある
現在の1秒は、セシウム原子時計をもとに決められています。
しかし、光格子時計などの光時計が進歩したことで、国際的に「秒の再定義」が検討されています。NICTも、セシウムのマイクロ波遷移から原子の光学遷移へのSI秒の再定義が検討されていると説明しています。
これは簡単に言うと、
「これからの1秒は、もっと正確な時計を基準に決め直そう」
という話です。
もし将来、光格子時計が新しい秒の基準になれば、香取教授の発明は世界中の時間の土台になることになります。
これはかなり大きな話です。
私たちが普段何気なく使っている「1秒」という単位が、日本発の技術によって変わるかもしれないのです。
香取秀俊教授はノーベル賞を受賞する?
光格子時計について調べると、「香取秀俊教授はノーベル賞候補なのか?」という話題も出てきます。
結論から言うと、2026年6月時点で香取秀俊教授はノーベル賞を受賞していません。
ただし、光格子時計は「ノーベル賞級」と言われることがあるほど、非常に大きな発明です。
その理由は、単に精度の高い時計を作ったからではありません。
時間という、世界共通の基本単位に関わる技術だからです。
もし光格子時計が将来の秒の定義に採用されれば、科学史に残る大きな成果になります。
ノーベル賞は誰がいつ受賞するかを予測できるものではありませんが、香取教授が世界的に注目される研究者であることは間違いありません。
光格子時計は家庭用になる?
では、将来は光格子時計が家庭に置かれるのでしょうか。
現時点では、家庭用になる可能性は低いです。
価格が5億円ということもありますし、装置としても非常に高度です。
少なくとも今すぐ腕時計や置き時計になるものではありません。
ただし、技術は少しずつ小型化・実用化されていきます。
昔のコンピューターも、最初は部屋いっぱいの大きさでした。それが今ではスマホの中に入っています。
光格子時計も、今は研究機関向けの装置ですが、将来的には社会インフラの裏側で使われるようになるかもしれません。
私たちが直接持つ時計ではなくても、通信や位置情報、標準時の精度向上を通じて、間接的に生活を支える可能性があります。
光格子時計をわかりやすく言うと?
光格子時計を一言でいうなら、
「原子をレーザーの箱に閉じ込めて、究極に正確な1秒を測る時計」
です。
普通の時計は、時間を知るための道具です。
しかし光格子時計は、時間そのものをより正確に決めるための装置です。
私たちが使う時計とは役割が少し違います。
時間を表示するというより、「世界の時間の基準を作る」ための時計に近い存在です。
よくある質問
Q. 光格子時計とは簡単にいうと何ですか?
光格子時計とは、原子をレーザーの光で閉じ込め、その原子の性質を利用して時間を測る超高精度な時計です。
普通の時計のように針や歯車で時間を刻むのではなく、原子の安定した動きを基準にして「1秒」を測ります。
Q. 光格子時計は本当に100億年に1秒しか狂わないのですか?
「100億年に1秒しか狂わない」というのは、光格子時計の精度をわかりやすく表した言い方です。
実際に100億年動かして確認したわけではありませんが、それほど誤差が小さい時計という意味です。
Q. 光格子時計を考案したのは誰ですか?
光格子時計を考案したのは、東京大学の香取秀俊教授です。
日本発の技術として世界中で注目されており、将来の「秒」の定義に関わる可能性もあります。
Q. 光格子時計の価格は本当に5億円ですか?
はい。島津製作所が発売した商用光格子時計は、1台5億円とされています。
ただし、家庭用の時計ではなく、大学や研究機関、標準時を管理する機関などで使われる高度な科学装置です。
Q. なぜ光格子時計はそんなに高いのですか?
高精度レーザー、真空装置、原子を冷やして制御する装置、精密な光学機器などが必要だからです。
普通の時計というより、最先端の研究設備に近いものです。
Q. 光格子時計と原子時計は何が違うのですか?
光格子時計も原子時計の一種です。
ただし、現在の標準時に使われているセシウム原子時計よりも、さらに高い精度を目指している次世代型の原子時計です。
Q. 光格子時計は私たちの生活に関係ありますか?
今すぐ家庭で使うものではありませんが、将来的にはGPS、通信、金融取引、地殻変動の観測などに役立つ可能性があります。
目に見えないところで、社会インフラを支える技術になるかもしれません。
Q. 光格子時計で地震予知はできますか?
光格子時計は、地面の高さの変化や重力のわずかな違いを測る研究に役立つ可能性があります。
ただし、現時点で「地震を予知できる」と断定することはできません。
Q. 香取秀俊教授はノーベル賞を受賞していますか?
2026年6月時点では、香取秀俊教授はノーベル賞を受賞していません。
ただし、光格子時計は「ノーベル賞級の発明」と言われることがあり、香取教授は世界的に注目されている研究者です。
Q. 光格子時計があればスマホの時計も正確になりますか?
直接スマホに光格子時計が入るわけではありません。
しかし、標準時や通信インフラの精度が上がれば、将来的にスマホや位置情報サービスにも間接的な恩恵がある可能性があります。
Q. 光格子時計は腕時計になりますか?
現時点では腕時計になる可能性は低いです。
装置が非常に高価で、レーザーや真空装置なども必要なため、家庭用・個人用の時計ではありません。
Q. 光格子時計で「1秒」の定義が変わるのですか?
将来的にはその可能性があります。
現在の1秒はセシウム原子時計をもとに決められていますが、光格子時計などの光時計が次世代の基準になる可能性が検討されています。
Q. NICTとは何ですか?
NICT(情報通信研究機構)は、日本の標準時を管理する国立研究機関です。スマホやパソコンの時刻合わせの基準となる日本標準時を維持しており、光格子時計など次世代の時間計測技術の研究も行っています。
まとめ
光格子時計は、東京大学の香取秀俊教授が考案した日本発の超高精度時計です。
レーザーで作った光格子の中に原子を閉じ込め、その原子の性質を利用して時間を測ります。
現在のセシウム原子時計よりも高い精度が期待されており、将来は「1秒」の定義を変える可能性もあります。
2025年には島津製作所が世界初の商用光格子時計を発売し、価格は1台5億円として大きな話題になりました。
光格子時計は家庭用の時計ではなく、大学、研究機関、標準時、地球科学などで使われる最先端の科学装置です。
また、考案者である香取秀俊教授は、ノーベル賞級の発明をした研究者として注目されています。
光格子時計は、ただ正確なだけの時計ではありません。
時間の基準、地球の測定、未来の社会インフラに関わる可能性を持った、まさに「未来の時計」といえるでしょう。