
「コンプライアンスを徹底する」「コンプライアンス違反が発覚した」といった言葉を、ニュースや職場で耳にすることがあります。
なんとなく「ルールを守ること」というイメージはあっても、
- コンプライアンスとは簡単にいうと何?
- 法律を守ることだけを意味するの?
- パワハラもコンプライアンス違反になる?
- 個人にも関係がある?
- 医療・看護・介護では何に気をつければいい?
など、詳しい意味まではわからないという人もいるでしょう。
コンプライアンスは企業だけに関係する難しい言葉ではありません。働く人はもちろん、SNSや個人情報を扱う私たち一人ひとりにも関係する身近な考え方です。
この記事では、コンプライアンスの意味や使い方、違反となる具体例、パワハラとの関係、医療・看護・介護などの分野で注意したいポイントまで、初心者にもわかりやすく解説します。
コンプライアンスとは?簡単にいうと「ルールや社会的な決まりを守ること」
コンプライアンスを簡単にいうと、法律やルール、社会的な決まりなどを守って適切に行動することです。
企業について使われることが多い言葉ですが、現在では法律を守るだけでなく、社会から求められる倫理やモラルなども含めて考えられるようになっています。
コンプライアンスの基本的な意味
「コンプライアンス(compliance)」には、英語で「従うこと」「遵守」といった意味があります。
日本では特に企業活動に関して使われることが多く、一般的には「法令遵守」と訳されます。
たとえば、
- 法律を守る
- 社内規則を守る
- 個人情報を適切に管理する
- 不正を行わない
- ハラスメントを防止する
などがコンプライアンスに関係します。
つまり、会社やそこで働く人が「守るべきルールに従って適切に行動する」という考え方です。
「法令遵守」だけではない
コンプライアンス=法令遵守と説明されることが多いものの、「法律に違反しなければ何をしてもいい」という意味ではありません。
たとえば、法律に明確に違反していなくても、
「会社として、その対応はどうなの?」
「利用者に対して不誠実では?」
と思われる行動を取れば、企業の信用を失う可能性があります。
そのため現在のコンプライアンスでは、
法律+社内規則+社会的な倫理やモラル
まで含めて考えるのが一般的です。
企業にとっては「法律に違反していないか」だけでなく、社会から見て適切な行動かどうかも重要になっています。
コンプライアンスを日本語にすると?
コンプライアンスは日本語では、一般的に「法令遵守」と訳されます。
ただし、実際の意味をわかりやすく表すなら、
「法律やルール、社会的な決まりを守ること」
と考えると理解しやすいでしょう。
場面によっては、
- 規則を守る
- ルールを守る
- 適切に行動する
- 社会的責任を果たす
などと言い換えられることもあります。
コンプライアンスの使い方・例文
コンプライアンスは、ニュースやビジネスの場面でよく使われます。
たとえば、
「社員に対してコンプライアンス研修を実施する」
→ 法律や社内ルールなどについて社員が学ぶ研修を行うという意味です。
「コンプライアンス違反が発覚した」
→ 法律や社内規則などに反する行為が見つかったという意味です。
「コンプライアンスを徹底する」
→ 組織全体でルールを守る意識や仕組みを強化するという意味で使われます。
「コンプライアンスを守る」という表現も日常的には使われますが、「コンプライアンス」自体に「遵守」という意味があるため、文章によっては「コンプライアンスを徹底する」「コンプライアンスを重視する」などとすると自然です。

なぜコンプライアンスが重要なの?
企業がコンプライアンスを重視する大きな理由は、単に「法律違反をしないため」だけではありません。
会社や従業員、顧客などを守り、社会からの信用を維持するためにも重要です。
企業の信用を守るため
企業にとって「信用」は大切な財産です。
商品やサービスに問題がなくても、不正やハラスメント、個人情報の不適切な取り扱いなどが発覚すると、企業そのものに対する信頼が低下する可能性があります。
一度失った信用を取り戻すには、長い時間がかかることもあります。
そのため、問題が起きてから対応するだけでなく、問題を起こさないための仕組みづくりが重要になります。
従業員や利用者を守るため
コンプライアンスは会社を守るだけのものではありません。
そこで働く従業員や、商品・サービスを利用する人を守る役割もあります。
たとえば、
- ハラスメントを防ぐ
- 安全な職場環境を整える
- 顧客の個人情報を守る
- 適切な商品やサービスを提供する
といった取り組みも関係します。
ルールを明確にして組織全体で共有することで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
SNSによって問題が広がりやすくなった
現在はSNSによって、企業や従業員の行動が短時間で広く知られることがあります。
たとえば、従業員による不適切な投稿や顧客情報の書き込みなどが拡散されれば、個人だけではなく勤務先の企業にも影響が及ぶ可能性があります。
「個人のSNSだから会社には関係ない」とは限りません。
そのため、企業ではSNSの利用についてガイドラインを設けたり、研修を行ったりするケースもあります。
コンプライアンス違反が企業経営に影響することも
重大なコンプライアンス違反が起きれば、
- 行政処分
- 損害賠償
- 取引停止
- 顧客離れ
- 採用への悪影響
- 企業イメージの低下
などにつながる可能性があります。
問題の内容によっては、企業経営そのものに大きな影響を与えることもあります。
そのためコンプライアンスは、一部の担当者だけが意識すればよいものではなく、経営者から従業員まで組織全体で取り組む必要があるテーマといえます。

コンプライアンス違反とは?
コンプライアンス違反とは、法律や社内規則、社会的な倫理などに反する行為を指します。
「違反」というと犯罪のような重大な行為だけを想像するかもしれませんが、身近な行動が問題になることもあります。
法律や社内ルールに違反する
もっともわかりやすいのが、法律や会社の規則に違反するケースです。
たとえば、
- 不正な会計処理
- 経費の不正利用
- データの改ざん
- 会社の機密情報の持ち出し
- 勤務時間などに関するルール違反
などがあります。
法律違反だけでなく、会社が定めた就業規則や情報管理ルールなどに反する行為も問題になる場合があります。
ハラスメントを行う
パワハラやセクハラなどのハラスメントも、コンプライアンス上の重要な問題です。
たとえば、立場を利用して部下に過度な要求をしたり、人格を否定するような発言を繰り返したりすれば、職場環境を悪化させる原因になります。
「指導のつもりだった」という理由だけで問題にならないとは限りません。
ハラスメントについては、後ほど詳しく解説します。
個人情報を不適切に扱う
顧客や従業員の個人情報を適切に管理することも重要です。
たとえば、
- 顧客情報を無断で持ち出す
- 必要のない人に個人情報を見せる
- 個人情報が入った書類を放置する
- 業務で知った情報をSNSに投稿する
などは注意が必要です。
医療・看護・介護の現場では特に多くの個人情報を扱うため、情報管理は重要なテーマになります。
不正や虚偽報告を行う
売上や成績をよく見せるために数字を変更したり、都合の悪い情報を意図的に隠したりする行為も問題になります。
「会社のためにやった」という理由があっても、不正が正当化されるわけではありません。
むしろ、問題を隠したことで被害がさらに大きくなるケースもあります。
SNSで不適切な情報を発信する
SNSもコンプライアンスと無関係ではありません。
仕事中に知った情報や顧客に関する情報、社内資料などを安易に投稿すると、情報漏えいにつながる可能性があります。
写真の背景に社内資料やパソコン画面が写り込むといった、意図しない情報漏えいにも注意が必要です。
「投稿して大丈夫かな?」と迷う情報は、公開する前に確認することが大切です。

パワハラとコンプライアンスの関係
パワハラ(パワーハラスメント)は、職場のコンプライアンスを考えるうえで重要な問題の一つです。
「仕事だから厳しい指導は仕方がない」「昔はこれくらい普通だった」と考える人もいるかもしれません。
しかし、業務上必要な指導とパワハラは同じではありません。
職場では、相手の人格や尊厳を傷つけるような言動を避け、誰もが安心して働ける環境をつくることが求められます。
パワハラはコンプライアンス上の重要な問題
職場におけるパワハラは、一般に次の3つの要素をすべて満たすものとして考えられています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 労働者の就業環境が害されるもの
単に「上司が部下を叱った」というだけで、すべてがパワハラになるわけではありません。
仕事を進めるうえで必要な注意や指導まで禁止されるものではなく、その目的や言い方、程度、状況などを含めて考える必要があります。
一方で、立場を利用して相手を必要以上に責めたり、人格を否定したりする行為は問題になる可能性があります。
セクハラ・マタハラなども含まれる
職場で注意したいハラスメントは、パワハラだけではありません。
たとえば、
- セクハラ(セクシュアルハラスメント)
- 妊娠・出産などに関するハラスメント
- 育児休業・介護休業などに関するハラスメント
などもあります。
こうした問題を「個人同士のトラブル」として終わらせず、組織として防止することが重要です。
そのため企業では、相談窓口を設けたり、研修を実施したりするなどの対策が行われています。
「昔は普通だった」は通用しにくい
職場で問題になりやすいのが、
「自分が若いころはもっと厳しかった」
「これくらい普通の指導だ」
という考え方です。
職場環境や社会の意識は時代とともに変化しています。
以前は問題視されなかった言動であっても、現在では不適切と判断される場合があります。
大切なのは「自分がどう思うか」だけではなく、相手の尊厳や職場環境にどのような影響を与えるかを考えることです。
ハラスメントを防ぐために企業ができること
ハラスメントを防ぐには、従業員個人の注意だけに頼るのではなく、会社として仕組みを整えることが大切です。
たとえば、
- ハラスメントに関する方針を明確にする
- 従業員への研修を行う
- 相談窓口を設置する
- 相談者のプライバシーに配慮する
- 問題が起きた場合に適切に事実確認を行う
などの取り組みがあります。
「問題が起きてから対応する」のではなく、問題を起こさない職場づくりを進めることもコンプライアンスの重要な役割です。

医療におけるコンプライアンスとは?
医療の現場でもコンプライアンスは非常に重要です。
病院や診療所などでは、患者の氏名や住所だけでなく、病歴や検査結果など、慎重な取り扱いが必要な情報を扱います。
また、人の生命や健康に関わる仕事であるため、法令や院内ルール、安全管理などを適切に守る必要があります。
患者の個人情報・プライバシーを守る
医療機関では、さまざまな患者情報を扱います。
たとえば、
- 氏名や住所
- 電話番号
- 病歴
- 診療内容
- 検査結果
- 処方された薬に関する情報
などがあります。
こうした情報を、業務上必要のない人に話したり、許可なく外部へ持ち出したりすることは避けなければなりません。
また、知人が受診していることを第三者に話すなど、日常会話から情報が漏れてしまう可能性にも注意が必要です。
医療関係の法律やルールを守る
医療の現場では、さまざまな法律や制度、院内ルールなどに沿って業務を行う必要があります。
医師、看護師、薬剤師など、それぞれの職種には役割や業務範囲があります。
「忙しいから」「いつもこうしているから」といった理由だけで決められた手順を省略すると、思わぬ問題につながる可能性があります。
法律だけでなく、院内で定められた安全管理や情報管理のルールを守ることも大切です。
適切な説明や記録を行う
医療では、患者への説明や診療・看護に関する記録も重要です。
正確な記録を残すことは、医療従事者同士で情報を共有し、安全な医療を提供するためにも役立ちます。
事実と異なる内容を記録したり、必要な記録を意図的に省いたりすることは問題につながります。
医療安全を守る
医療現場では、ちょっとした確認不足が重大な事故につながる可能性があります。
そのため、
- 患者本人の確認
- 薬剤の確認
- 医療機器の適切な使用
- 感染対策
- インシデントなどの適切な報告
といった基本的な安全対策を継続することが重要です。
コンプライアンスは「違反すると怒られるルール」ではなく、患者と医療従事者の双方を守るための仕組みでもあります。

看護師に求められるコンプライアンスとは?
看護師は患者と接する機会が多いため、コンプライアンスを身近に意識する必要があります。
患者情報の管理はもちろん、患者との接し方やSNSの利用など、日常のさまざまな場面が関係します。
患者情報を外部に漏らさない
看護師は仕事を通じて、患者の病気や治療、家庭環境など多くの情報を知ることがあります。
業務上知った情報を、家族や友人などに安易に話さないことが大切です。
たとえ患者の名前を出していなくても、勤務先や出来事などを組み合わせることで、本人が特定される可能性もあります。
SNSへの投稿にも注意する
SNSでは特に慎重な判断が必要です。
たとえば、
「今日は珍しい症例の患者さんが来た」
といった投稿でも、日時や勤務先などの情報と組み合わされると患者を推測できる可能性があります。
また、院内で撮影した写真の背景に、
- 患者名
- カルテ
- ホワイトボード
- パソコン画面
- 書類
などが写り込むこともあります。
投稿内容だけではなく、写真や動画の背景まで確認することが重要です。
記録を適切に扱う
看護記録は、患者の状態や行ったケアなどを共有するための重要な情報です。
記憶に頼って後から適当に記入したり、実際には行っていない処置を記録したりすることは避けなければなりません。
また、記録を閲覧できる立場であっても、業務上必要のない患者の情報を興味本位で見ることは適切ではありません。
「見ることができる」と「見てもよい」は同じではないという意識が大切です。
患者の尊厳やプライバシーに配慮する
コンプライアンスは情報管理だけではありません。
患者への接し方も重要です。
診療や看護では、患者の身体や非常にプライベートな情報に接することがあります。
そのため、
- 必要以上に他人に聞こえる場所で病状を話さない
- 患者の気持ちや尊厳に配慮する
- プライバシーを確保する
- 相手を傷つけるような言動を避ける
といった配慮も求められます。
医療・看護のコンプライアンスは、単に決まりを守るためだけではありません。
患者が安心して医療を受けられる環境をつくり、医療従事者自身を守るためにも重要な考え方です。

介護におけるコンプライアンスとは?
介護の現場でも、コンプライアンスは非常に重要です。
介護職員は、利用者の身体に直接触れたり、健康状態や家庭環境、財産などの個人的な情報を知ったりする機会があります。
また、高齢者や支援を必要とする人と接する仕事だからこそ、利用者の安全だけでなく、尊厳や権利を守ることも大切です。
利用者の尊厳を守る
介護では、利用者を一人の人として尊重することが基本です。
たとえば、
- 本人の意思を確認せずに物事を決める
- 子どもに話すような言葉遣いをする
- 他の利用者の前で個人的な事情を話す
- 本人が嫌がっていることを必要以上に強要する
といった対応には注意が必要です。
介護する側にとっては日常的な行動でも、利用者にとっては不快に感じたり、尊厳を傷つけられたと感じたりすることがあります。
「介護してあげている」という考えではなく、利用者の立場や気持ちを尊重する姿勢が大切です。
虐待や身体拘束などへの適切な対応
介護現場では、高齢者虐待の防止も重要なテーマです。
虐待というと暴力だけを想像しがちですが、それだけではありません。
一般的には、
- 身体的虐待
- 介護・世話の放棄や放任
- 心理的虐待
- 性的虐待
- 経済的虐待
などがあります。
また、利用者の行動を制限する身体拘束についても、自由や尊厳に大きく関わるため、法律や制度、施設のルールなどに沿った慎重な対応が求められます。
「安全のためだから何をしてもよい」ということではありません。
個人情報を適切に管理する
介護施設や訪問介護などでは、
- 氏名や住所
- 病歴や健康状態
- 家族構成
- 要介護度
- 生活状況
- 財産に関する情報
など、多くの個人情報を扱います。
こうした情報を業務上必要のない人に話したり、書類を持ち出したりしないことが大切です。
SNSへの投稿にも注意が必要です。
利用者の顔を隠していても、施設名や日時、周囲の状況などから本人が特定される可能性があります。
介護記録や請求を正しく行う
介護サービスでは、利用者の状態や提供したサービスについて記録します。
実際には行っていないサービスを記録したり、事実と異なる内容を書いたりすることは問題です。
また、介護報酬の請求についても、実際に提供したサービスや制度上のルールに沿って適切に行う必要があります。
「少しくらいなら大丈夫」という考えが、大きな問題につながる可能性もあります。
介護におけるコンプライアンスは、利用者を守るだけでなく、そこで働く職員や施設そのものを守ることにもつながります。

個人にもコンプライアンスは関係ある?
コンプライアンスというと、「会社や組織が守るもの」というイメージが強いかもしれません。
しかし、会社のコンプライアンスを実際に支えているのは、そこで働く一人ひとりです。
正社員だけでなく、パート・アルバイトなどで働く場合にも、勤務先のルールや情報管理などを意識する必要があります。
コンプライアンスは会社だけの話ではない
企業がどれだけ細かなルールを作っても、働く人が守らなければ意味がありません。
たとえば、
「少しくらいなら大丈夫」
「みんなやっている」
「誰にも見つからないだろう」
という判断から問題が起こることがあります。
重要なのは、法律や会社のルールを知ったうえで、自分の行動に問題がないかを考えることです。
SNSでの情報発信
個人が特に注意したいのがSNSです。
SNSでは、何気なく投稿した写真や文章から勤務先の情報が漏れることがあります。
たとえば、
- 職場で撮影した写真を投稿する
- 社内の出来事を書く
- 顧客について投稿する
- 未発表の商品やサービスについて書く
- 同僚や上司について実名が推測できる内容を書く
といった行動には注意が必要です。
鍵付きのアカウントや少人数のグループであっても、投稿した情報が外部へ広がらないとは限りません。
「公開されても問題ない内容か」を考えてから投稿することが大切です。
個人情報や写真の取り扱い
スマートフォンで簡単に写真を撮影できるようになったことで、意図しない情報漏えいにも注意が必要になりました。
たとえば、職場で撮った写真の背景に、
- 顧客名が書かれた書類
- 社内資料
- パソコンの画面
- ホワイトボード
- 社員証
などが写り込むことがあります。
本人は風景や食事を撮影したつもりでも、第三者から見ると重要な情報が確認できる場合があります。
写真を投稿するときは、背景まで確認する習慣をつけると安心です。
職場で知った情報を外部に漏らさない
仕事をしていると、一般には公開されていない情報を知ることがあります。
顧客情報だけでなく、
- 新商品や新サービス
- 売上などの社内情報
- 取引先に関する情報
- 人事に関する情報
- 社内で起きたトラブル
なども含まれます。
家族や友人との会話だからといって、何でも話してよいわけではありません。
また、カフェや電車などで仕事の話をしていて、周囲の人に聞かれてしまうこともあります。
会社の外でも情報管理を意識することが大切です。
副業や仕事上のルールにも注意する
副業をする人が増えていますが、本業との関係にも注意が必要です。
勤務先によっては、副業について届出などのルールを定めている場合があります。
また、副業そのものが認められていても、
- 本業の顧客情報を利用する
- 会社のパソコンや資料を無断で使う
- 勤務時間中に副業をする
- 会社の機密情報を副業先で利用する
といった行為は別の問題につながる可能性があります。
副業を始める場合は、勤務先の就業規則などを確認しておくことが大切です。
コンプライアンスは「会社から押し付けられるルール」と考えるより、会社や顧客、同僚、そして自分自身をトラブルから守るための考え方と捉えるとわかりやすいでしょう。

コンプライアンス違反をするとどうなる?
コンプライアンス違反が起きると、問題を起こした本人だけでなく、会社や同僚、顧客、取引先などにも影響が広がる可能性があります。
違反の内容によって影響は異なりますが、「ちょっとしたルール違反」のつもりだった行動が、大きな問題に発展することもあります。
会社から処分を受ける可能性がある
従業員が就業規則や社内ルールなどに違反した場合、会社から注意や指導を受けることがあります。
重大なケースでは、就業規則などに基づいて懲戒処分の対象になる場合もあります。
ただし、コンプライアンス違反をしたからといって、必ず同じ処分になるわけではありません。
違反の内容や程度、経緯などによって対応は異なります。
「会社のルールくらいなら守らなくても大丈夫」と考えず、就業規則や社内規程を確認しておくことが大切です。
損害賠償などにつながる場合もある
コンプライアンス違反によって他人や会社に損害を与えた場合には、損害賠償などの問題に発展する可能性もあります。
また、法律に違反する行為であれば、内容によっては行政上・刑事上の責任が問題になるケースもあります。
すべてのコンプライアンス違反が法律上の責任につながるわけではありませんが、「社内だけで済む問題」とは限らない点には注意が必要です。
会社の信用が低下する
企業にとって特に大きな影響となるのが、社会からの信用低下です。
たとえば、
- 不正会計
- 個人情報の漏えい
- データの改ざん
- ハラスメント
- 不適切な広告や表示
- 商品やサービスに関する不正
などが発覚すると、企業そのものに対する信頼が損なわれる可能性があります。
その結果、顧客が商品やサービスの利用を控えたり、取引先が取引を見直したりすることも考えられます。
長い時間をかけて築いた信用でも、一つの問題によって大きく傷つくことがあります。
SNSで問題が拡散することも
現在は、企業の不祥事や従業員の不適切な行動がSNSで急速に広がることがあります。
投稿した本人が削除しても、
- スクリーンショットが保存される
- 別のSNSへ転載される
- ニュースサイトなどで取り上げられる
といった形で情報が残る可能性があります。
また、個人の投稿であっても勤務先が特定されれば、企業への批判につながる場合があります。
SNSでは「投稿する前に一度確認する」ことが重要です。

コンプライアンスを守るためにできること
コンプライアンスというと、難しい法律や細かな規則をすべて覚えなければならないように感じるかもしれません。
しかし、日常の仕事では基本的なルールを確認し、「この行動は問題ないだろうか」と考える習慣を持つことが第一歩になります。
法律や社内ルールを確認する
まず大切なのは、自分の仕事に関係するルールを知ることです。
たとえば、
- 就業規則
- 情報セキュリティに関するルール
- 個人情報の取り扱い
- SNSの利用ルール
- ハラスメント防止に関する方針
- 業務上のマニュアル
などを確認しておきましょう。
ルールは変更されることもあるため、研修や社内からのお知らせなどにも目を通しておくことが大切です。
「これくらい大丈夫」と自己判断しない
コンプライアンス違反は、必ずしも悪意のある人だけが起こすものではありません。
「これくらいなら問題ないだろう」
「前にもやったことがある」
「ほかの人もやっている」
といった判断から、問題が起きることもあります。
特に、個人情報や会社の機密情報などを扱う場合は、慣れている作業であっても決められた手順を守ることが重要です。
わからないことがあれば、自己判断せずに確認しましょう。
個人情報の取り扱いに注意する
個人情報は、さまざまな職場で扱われています。
顧客名簿や従業員情報だけでなく、メールやパソコン画面、紙の書類などにも個人情報が含まれることがあります。
たとえば、
- 書類を机の上に放置しない
- 必要のないデータを持ち出さない
- メールの送信先を確認する
- パスワードを適切に管理する
- 不要になった書類を適切に処分する
など、日常的な行動が情報漏えい防止につながります。
SNSへ投稿する前に確認する
SNSへ投稿するときは、文章だけではなく写真や動画も確認しましょう。
特に職場で撮影した写真には、
- 顧客情報
- 社内資料
- パソコン画面
- 社員証
- ホワイトボード
- 未発表の商品
などが写り込む可能性があります。
また、会社名を書いていなくても、制服や建物、過去の投稿などから勤務先が推測される場合があります。
「この投稿を顧客や勤務先の人が見ても問題ないか」と考えてから公開するとよいでしょう。
判断に迷ったら担当部署などに相談する
コンプライアンスで特に大切なのは、一人で判断できないことをそのままにしないことです。
「この情報を外部に出してもいいのかわからない」
「上司の言動がハラスメントなのかわからない」
「この仕事の進め方はルール上問題ないだろうか」
と迷うこともあるでしょう。
そのような場合は、勤務先の上司や担当部署、相談窓口など、適切な相談先を利用することが大切です。
また、問題を相談した人を責めたり、不利益な扱いをしたりするような職場では、問題を早期に発見しにくくなります。
組織側にも、従業員が安心して相談できる環境づくりが求められます。
コンプライアンスを守るために重要なのは、「絶対に間違えない人になること」ではありません。
ルールを知り、迷ったら確認し、問題に気づいたら早めに相談する。
こうした日々の積み重ねが、コンプライアンス違反を防ぐことにつながります。

コンプライアンスと似た言葉の違い
コンプライアンスと一緒に使われる言葉には、「ガバナンス」「モラル」「倫理」「リスクマネジメント」などがあります。
どれも企業や個人が適切に行動するために重要ですが、意味や役割は少しずつ異なります。
違いを簡単に整理してみましょう。
コンプライアンスとガバナンスの違い
コンプライアンスは、法律や社内ルール、社会的な規範などを守ることです。
一方、ガバナンスは、組織が適切に運営されるように管理・監督する仕組みや考え方を指します。
簡単に分けると、
コンプライアンス
→ ルールを守ること
ガバナンス
→ ルールを守れるように組織を管理・監督すること
と考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、会社が「顧客情報を社外へ持ち出してはいけない」というルールを設けているとします。
従業員がそのルールを守ることはコンプライアンスです。
一方、
- 情報を持ち出せないシステムを導入する
- アクセス権限を管理する
- 定期的に監査する
- 問題があれば経営側へ報告する
といった仕組みを整えることは、ガバナンスに関係します。
コンプライアンスとガバナンスは別の考え方ですが、企業を適切に運営するうえでは密接に関係しています。
※ガバナンスについては、別記事で詳しく解説しています。

コンプライアンスとモラルの違い
モラルは、日本語では「道徳」や「倫理観」といった意味で使われます。
「人として、これはしてはいけない」
「相手に迷惑をかけないようにしよう」
といった、一人ひとりの良識や判断に関係する考え方です。
一方、コンプライアンスは個人の良識だけではなく、法律や会社の規則など具体的なルールも含めて考えます。
たとえば、電車の中で大声で話さないことは、法律というよりマナーやモラルの問題として考えられることが多いでしょう。
これに対して、会社の顧客情報を無断で持ち出す行為は、社内ルールや個人情報の取り扱いなど、コンプライアンス上の問題になる可能性があります。
コンプライアンスと倫理の違い
倫理とは、「何が正しい行動なのか」「どのように行動するべきなのか」を考えるための基準です。
法律ですべての行動を細かく決めることはできません。
そのため、明確なルールがない場面では、倫理的に適切かどうかを考えることも重要です。
たとえば、
「法律では禁止されていないから問題ない」
という行動でも、顧客を意図的に誤解させたり、立場の弱い人に不利益を与えたりすれば、社会から批判される可能性があります。
現在のコンプライアンスでは、単なる法令遵守だけでなく、こうした倫理的な視点も重要と考えられています。
コンプライアンスとリスクマネジメントの違い
リスクマネジメントとは、企業活動などで起こり得るリスクを見つけ、影響をできるだけ小さくするために管理することです。
対象となるリスクはコンプライアンス違反だけではありません。
たとえば、
- 災害
- サイバー攻撃
- 情報漏えい
- 事故
- 取引先の倒産
- コンプライアンス違反
など、さまざまなリスクがあります。
つまり、コンプライアンス違反も企業にとって一つのリスクであり、それを防止・管理することはリスクマネジメントの一部と考えることができます。
4つの言葉を簡単に整理すると、
| 言葉 | 簡単にいうと |
|---|---|
| コンプライアンス | 法律・ルール・社会的規範などを守る |
| ガバナンス | 組織を適切に管理・監督する |
| モラル・倫理 | 何が正しい行動かを考える |
| リスクマネジメント | 起こり得るリスクを把握して管理する |
それぞれ役割は異なりますが、企業や組織の信用を守るためには、どれか一つだけではなく、組み合わせて考えることが重要です。

コンプライアンスで勘違いしやすいポイント
「コンプライアンス」という言葉が広く使われるようになった一方で、意味を必要以上に広く捉えたり、反対に「法律を守るだけ」と考えたりすることがあります。
ここでは、特に勘違いしやすいポイントを整理します。
「法律さえ守ればいい」わけではない
コンプライアンスは日本語で「法令遵守」と訳されるため、
「法律に違反しなければコンプライアンス上は問題ない」
と思われることがあります。
しかし、現在の企業活動では法律だけでなく、
- 社内規則
- 業界のルール
- 社会的な規範
- 企業倫理
なども意識することが重要です。
法律違反ではなくても、顧客をだますような行為や社会的に不適切な行動を取れば、企業の信用を失うことがあります。
「違法かどうか」だけでなく、「社会から見て適切か」という視点も大切です。
コンプライアンスは企業だけのものではない
ニュースでは「企業のコンプライアンス違反」という表現が多いため、会社だけの問題だと思われがちです。
しかし、実際に行動するのはそこで働く一人ひとりです。
正社員だけでなく、パート・アルバイトなどであっても、
- 顧客情報を守る
- 職場のルールを守る
- SNSへ内部情報を書かない
- ハラスメントにつながる言動を避ける
といった意識が必要です。
組織のコンプライアンスは、一人ひとりの日常的な行動によって支えられています。
マナーとコンプライアンスは同じではない
マナーとコンプライアンスも混同されることがあります。
マナーは、相手に不快な思いをさせないための礼儀や作法です。
一方、コンプライアンスは法律や規則、社会的な規範などを守ることを中心とした考え方です。
たとえば、職場で挨拶をしないことは「マナーがよくない」と考えられることはあっても、それだけで直ちにコンプライアンス違反になるとは限りません。
何でも「コンプライアンス違反」と呼ぶのではなく、ルール違反なのか、倫理上の問題なのか、単なるマナーの問題なのかを分けて考えることも大切です。
厳しくすればコンプライアンスが強化されるとは限らない
コンプライアンスを強化するために、細かなルールを増やせばよいと思われることがあります。
しかし、ルールが多すぎたり内容がわかりにくかったりすると、従業員が理解できず、形だけのルールになってしまうことがあります。
また、失敗を厳しく責めるだけの職場では、
「報告すると怒られる」
「問題を隠したほうがいい」
と考える人が出てくる可能性もあります。
コンプライアンスを機能させるには、
- わかりやすいルールを作る
- 定期的に研修する
- 相談しやすい環境を整える
- 問題を早く報告できる仕組みを作る
- 必要に応じてルールを見直す
といった取り組みも重要です。
コンプライアンスは「従業員を厳しく取り締まるためのもの」ではありません。
会社や従業員、顧客などを守り、安心して仕事やサービスを利用できる環境をつくるための考え方です。

コンプライアンスに関するよくある質問
最後に、コンプライアンスについてよくある疑問をQ&A形式でまとめます。
コンプライアンスを簡単にいうと?
コンプライアンスを簡単にいうと、法律やルール、社会的な規範などを守って適切に行動することです。
日本語では「法令遵守」と訳されることが多いですが、現在では法律を守るだけでなく、社内規則や企業倫理、社会から求められる責任なども含めて考えられています。
「法律に違反していないから何をしてもよい」という考え方ではないことがポイントです。
コンプライアンス違反にはどんなものがある?
代表的なものとして、
- 法律や社内規則への違反
- 不正会計やデータ改ざん
- 個人情報や機密情報の漏えい
- パワハラやセクハラなどのハラスメント
- 不適切なSNS投稿
- 虚偽の報告
- 不適切な広告や表示
などがあります。
ただし、何がコンプライアンス違反に当たるかは、法律や業種、会社の規則、具体的な状況などによって異なります。
パワハラはコンプライアンス違反?
パワハラは、職場のコンプライアンスを考えるうえで重要な問題です。
ただし、上司が部下を注意したり指導したりすることが、すべてパワハラになるわけではありません。
業務上必要かつ相当な範囲で行われる適切な指導と、人格を否定したり必要以上に追い詰めたりする行為は分けて考える必要があります。
企業には、ハラスメントを防止するための方針や相談体制などを整えることも求められます。
個人にもコンプライアンスは必要?
必要です。
企業がコンプライアンスを徹底するためには、そこで働く一人ひとりがルールを理解して行動することが重要です。
特に、
- SNSへの投稿
- 顧客情報の取り扱い
- 社内情報の持ち出し
- ハラスメントにつながる言動
- 副業や仕事上のルール
などは、個人でも意識しておきたいポイントです。
「会社が守るもの」というより、「組織とそこで働く人が一緒に取り組むもの」と考えるとわかりやすいでしょう。
医療・看護・介護でコンプライアンスが重要なのはなぜ?
医療・看護・介護では、人の健康や生活に関わるだけでなく、多くの個人情報を取り扱います。
そのため、
- 患者や利用者の個人情報を守る
- プライバシーや尊厳に配慮する
- 適切な記録を残す
- 決められた手順を守る
- 安全管理を徹底する
といった取り組みが特に重要になります。
コンプライアンスを守ることは、患者や利用者だけでなく、そこで働く医療・介護従事者を守ることにもつながります。
コンプライアンスとガバナンスの違いは?
コンプライアンスは、法律やルールなどを守ることです。
一方、ガバナンスは、組織が適切に運営されるよう管理・監督する仕組みや考え方です。
簡単に分けると、
コンプライアンス
→ ルールを守る
ガバナンス
→ ルールを守れる組織の仕組みをつくる
という違いがあります。
両者は別の意味を持ちますが、健全な企業経営を行うためにはどちらも重要です。
まとめ
コンプライアンスとは、簡単にいうと「法律やルール、社会的な規範などを守って適切に行動すること」です。
日本語では「法令遵守」と訳されますが、現在では法律だけを守ればよいという考え方ではありません。
この記事のポイントをまとめると、
- コンプライアンスは法令遵守だけを意味するものではない
- 社内規則や社会的な倫理なども重要になる
- パワハラなどのハラスメントも重要なテーマ
- 医療・看護では患者の安全や個人情報、プライバシーを守る
- 介護では利用者の尊厳や権利を守ることも大切
- SNSや個人情報の扱いなど、個人にも関係する
- コンプライアンスとガバナンスは意味が異なる
- 違反を防ぐには、ルールを知り、迷ったら確認・相談することが大切
となります。
コンプライアンスは、単に「禁止事項を増やして人を縛るためのもの」ではありません。
会社や従業員、顧客、患者、介護サービスの利用者など、それぞれの立場の人を守り、安心して働いたりサービスを利用したりできる環境をつくるための考え方でもあります。
難しく考えすぎず、まずは「決められたルールを確認する」「相手の立場を考える」「迷ったら相談する」といった身近な行動から意識することが、コンプライアンスを守る第一歩といえるでしょう。