
「阪神タイガースって、本当はタイガーズじゃないの?」
野球を見ていて、そんな疑問を持ったことがある人も多いのではないでしょうか。
英語で Tigers と書くなら、「タイガーズ」と読むほうが自然に感じますよね。
ところが、日本では昔から「阪神タイガース」が正式名称として使われています。
実はこのようなケースは阪神だけではありません。
・ニューヨークヤンキース ・楽天イーグルス ・ロサンゼルス・ドジャース
など、英語では「ズ」に近い発音なのに、日本語では「ス」で表記される名前が数多く存在します。
一方で、
・北海道日本ハムファイターズ ・サザンオールスターズ ・マリナーズ
のように、「ズ」で表記されるケースもあります。
では、なぜ「ス」になったり「ズ」になったりするのでしょうか。
この記事では、阪神タイガースをきっかけに、英語と日本語の発音やカタカナ表記の違い、日本独特の言葉の定着文化について、わかりやすく解説していきます。
英語では Tigers は「タイガーズ」に近い発音
まず結論から言うと、英語としての発音だけを見るなら、Tigers は「タイガーズ」に近い音です。
英語の単語では、最後に「s」が付くと、複数形や三人称単数などを表すことが多く、発音は「ス」だけでなく「ズ」に近くなることがあります。
たとえば、
・Dogs → ドッグズ ・Players → プレイヤーズ ・Tigers → タイガーズ
というイメージです。
つまり、英語として考えると、「阪神タイガーズ」のほうが発音に近いと言えます。
しかし、日本のプロ野球チーム名としては、正式名称は「阪神タイガース」です。
これは間違いではなく、日本語として定着した固有名詞だからです。
なぜ阪神は「タイガース」なのか
阪神タイガースが誕生したのは1935年です。
当時、阪神電鉄が「大阪野球倶楽部」を設立し、球団名の愛称を社内公募で募集したと言われています。
その中で最も人気だった名前が「大阪タイガース」だったそうです。
英語として考えると、Tigers は「タイガーズ」に近い発音になります。
しかし、当時は現在ほど英語発音を厳密にカタカナ化する時代ではありませんでした。
そのため、
・タイガースのほうが発音しやすかった
・「ズ」より「ス」のほうがスマートに感じられた
・日本語として自然だった
などの理由があったのではないかと言われています。
ただし、はっきりした理由は残っていないようです。
しかし、少なくとも球団創設時から「タイガース」という表記でスタートしていたことは確かです。
また、昔の日本語には、現在よりも「ズ」を強く使わない傾向があったとも言われています。
その結果、
・タイガース ・イーグルス ・ドジャース
のように、「ス」で終わる表記が広まりました。
そして、一度チーム名として定着すると、英語の発音とは別に「正式名称」として扱われるようになります。
つまり、英語的にはタイガーズでも、日本語の球団名としてはタイガースが正解というわけです。
実はデトロイト・タイガースにも影響?
面白いのは、MLBのデトロイト・タイガースです。
本来の英語発音に近づけるなら、「ディトロイト・タイガーズ」のような音になります。
しかし、日本では「デトロイト・タイガース」という表記が一般的です。
これは、日本で「阪神タイガース」という名称が長年定着していた影響もあるのではないか、と言われています。
つまり、日本人の中で「Tigers=タイガース」という感覚が強く定着していた可能性があるわけです。
実はバンド名でも「タイガース」
さらに有名なのが、1960年代のグループサウンズ「ザ・タイガース」です。
沢田研二さん(ジュリー)が所属していたバンドとして知られています。
こちらも英語発音だけで考えるなら「タイガーズ」に近くなりそうですが、日本では「タイガース」という名前で定着しました。
つまり、「Tigers をタイガースと読む感覚」は、スポーツだけではなく、日本のカタカナ文化全体に広がっていたとも考えられます。
ヤンキースやドジャースも実は英語発音とは少し違う
阪神タイガースだけを見ると不思議に感じますが、実は海外スポーツチームでも同じような例はたくさんあります。
ニューヨーク・ヤンキース
Yankees は英語では「ヤンキーズ」に近い発音です。
しかし、日本では昔から「ヤンキース」と呼ばれています。
現在では、こちらの表記のほうが自然に感じる人も多いでしょう。
ロサンゼルス・ドジャース
Dodgers も、本来の発音に近づけるなら「ドジャーズ」に近い音になります。
ですが、日本では「ドジャース」が完全に定着しています。
大谷翔平選手の活躍で毎日のように耳にするようになりましたが、「ドジャーズ」と表記されることはほとんどありません。
楽天イーグルス
Eagles も英語では「イーグルズ」に近い発音です。
それでも日本の球団名としては「イーグルス」が正式名称です。
つまり、日本語では「英語として正しいか」より、「どう定着したか」のほうが重要になるケースが多いのです。
一方で「ファイターズ」「スターズ」はなぜズなの?
ここで気になるのが、「ズ」が使われるケースです。
たとえば、
・北海道日本ハムファイターズ ・サザンオールスターズ ・マリナーズ
などは、「ズ」で表記されています。
では、なぜこちらは「ス」ではないのでしょうか。
実は、カタカナ語の表記には厳密なルールがあるわけではありません。
時代背景や企業の命名方針、発音の印象、読みやすさなど、さまざまな理由で決まっています。
特に近年は、英語の発音に近づける傾向も強くなっています。
そのため、昔のチーム名には「ス」が多く、比較的新しい名称には「ズ」が使われやすいという傾向もあります。
ただし、これは絶対ではありません。
最終的には「公式名称としてどう採用されたか」が大きいと言えるでしょう。
日本語は英語をそのまま再現する言語ではない
そもそも、日本語と英語は発音の仕組みがかなり違います。
日本語は、
・母音がはっきりしている
・音節が比較的単純
・子音だけで終わる音が少ない
という特徴があります。
一方、英語は子音の連続や語尾の変化が多く、日本語では完全に再現しきれません。
そのため、日本語では昔から「カタカナ化」が行われてきました。
たとえば、
・McDonald’s → マクドナルド
・Disney → ディズニー
・baseball → ベースボール
なども、本来の英語発音そのままではありません。
つまり、日本語のカタカナ表記は「翻訳」ではなく、日本語向けに調整された発音表現とも言えるのです。
実は昔の外来語には「ス」が多かった
昔の日本語では、現在よりも「ズ」を強く発音する文化が弱かったとも言われています。
そのため、古いカタカナ語を見ると、「ス」で終わるものが多く見られます。
たとえば、
・ガラス
・メリヤス
・ステータス
なども、英語発音とは少し異なる形で定着しています。
スポーツチーム名にも、その時代のカタカナ文化が影響していると考えられます。
特に昭和の新聞・ラジオ・テレビは影響力が大きく、一度広まった表記は長く残りやすい傾向がありました。
そのため、「タイガース」「ドジャース」「ヤンキース」といった表記も、そのまま定着していったのでしょう。
野球以外にもある「不思議な日本語表記」
このような現象は、野球以外にもたくさんあります。
ビートルズ
The Beatles は英語では「ビートルズ」に近い発音ですが、日本語では少し柔らかい発音で定着しています。
ローリング・ストーンズ
The Rolling Stones は「ストーンズ」と表記されます。
こちらは「ンズ」が使われています。
Bluetooth
Bluetooth は「ブルートゥース」が一般的ですが、「ブルーツース」と誤読されることもあります。
マクドナルド
英語発音にかなり近づけるなら、「マクダーナルズ」のような音になります。
しかし、日本では「マクドナルド」が正式名称です。
つまり、外来語は「原語の完全再現」ではなく、「日本語としてどう受け入れられたか」が重要なのです。
日本語表記は“正しい発音”より“定着”が重要
ここまで見てきたように、
・タイガース ・ヤンキース ・ドジャース ・イーグルス
などの表記は、英語発音だけを基準にすると少し不思議に感じるかもしれません。
しかし、日本語では「正式名称として長年使われていること」が非常に重要です。
そのため、英語としては「タイガーズ」に近くても、日本語の球団名としては「阪神タイガース」が正解になります。
これは間違いではなく、日本語独自の言葉文化と言えるでしょう。
まとめ
阪神タイガースを見て、「本当はタイガーズじゃないの?」と思った人は少なくありません。
実際、英語の発音に近づけるなら「タイガーズ」のほうが自然です。
しかし、日本では昔から「タイガース」が正式名称として定着しています。
そして同じような例は、
・ヤンキース ・ドジャース ・イーグルス
など、スポーツ界に数多く存在します。
一方で、
・ファイターズ ・スターズ ・マリナーズ
のように、「ズ」で表記されるものもあります。
これは、英語の正確さだけではなく、日本語としての読みやすさや歴史、定着文化が関係しているためです。
普段何気なく見ているチーム名も、こうして考えてみると、日本語と英語の違いが見えてきて面白いですね。